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コットンフリースパジャマ開発秘話~天然繊維でフリースに負けない暖かさを~

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この記事の監修者岩本悠資
所属:岩本繊維株式会社 代表取締役
出身:1983年10月 京都生まれ
経歴 同志社大学経済学部卒業。
広告代理店入社、営業部配属。
岩本繊維入社後、日本全国の寝具専門店、家具店などの小売店への卸営業活動を経て、自社ECサイト「Living Mahoroba楽天店」「つくるパジャマ」オープン。睡眠健康指導士のアプローチで快眠に関する知識や寝装品、 パジャマ選びなどの情報をブログで発信。
資格
趣味 寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒

ふわふわで暖かいフリースに負けない生地を天然素材の綿で再現したい!という想いで試行錯誤を重ねに重ね誕生したコットンフリースパジャマ。皆様にお届けできる生地を開発するまでの一部始終を開発者のエピソードとコットンフリースパジャマの魅力を合わせてご紹介いたします。
涙なしでは語れない(?)、企画から製品になるまで、紆余曲折を経た4年の道のりをぜひご覧くださいませ!

冬にダントツ人気のフリース素材

暖かいフリースパジャマをお届けしたい!

その暖かさで冬に絶大な人気を誇るフリース素材。ふわふわな起毛が気持ちよく、軽さや伸縮性も兼ね備えているためアウターやブランケットなど様々なシーンで活躍し、「冬はフリース一択!」という人も多いのではないでしょうか。また、つくるパジャマでは開店した当初から、ふわふわで暖かいフリースのような風合いをもつパジャマを天然繊維でおつくりし皆様にお届けしたいという想いを持ち続けていました。

そもそもフリースって?

フリースは化学繊維でできている

そもそもフリースは通常ポリエステルからつくられ、ポリエステルの中でもPETといわれる原料でペットボトルと同じものからできています。ポリエステルなどの化学繊維は蒸れやすく、環境負荷の問題も懸念されます。フリース自体は化学繊維でつくられることが主流であるため、天然繊維でのフリースをつくることはそう簡単な道のりではありませんでした。

理想のフリースを求めた4年間

こうして始まったフリースの開発

フリースのような風合いの生地を開発をするのはそう簡単なことではありませんでした。なぜなら綿での起毛素材はほとんどないためです。

試作をしては失敗…の悪戦苦闘

まず、秋冬に人気な起毛素材であるネルは生地自体がしっかりとしていて温かく保温性が高いものです。今回、フリースのような風合いを出すためにはボリュームや厚みを求めていたため断念しました。

ネルについては詳しく知りたい方はこちらの記事へ↓

 

次に当店でも人気のある二重ガーゼや三重ガーゼを起毛してはどうかと思い立ち、生地屋さんに問い合わせてみるも、ガーゼ生地を両面起毛は物性的に絶対不可能とのことでボリュームも思っていたものとは違いました。


そしてスウェット生地を両面起毛にしようと挑戦してみたり、そのほかにも様々な素材を両面起毛してみようと挑戦をくりかえすもなかなかうまくいかず…。

やっと出会えた両面起毛のできる重厚なエイトロックスムース!期待するも洗濯後の型崩れや毛玉ができやすいことなど、商品化までには至りませんでした。

そうやって10社以上もの会社に聞きまわったり実際に足を運び、試行錯誤を重ねているうちにとうとう4年の月日が流れていました。

千亀利織との出会い

そんなとき、ふとある方から紹介していただいたのが「千亀利織」でした。千亀利織は大阪府泉州、岸和田の井嶋織物工業様が手掛ける伸縮性のある起毛織物。起毛のボリューム感や伸縮性はまさに4年間求め続けた理想のフリースのような風合いだったのです!

—余談にはなりますが、千亀利織の名前の由来は岸和田市岸城町にあった岸和田城の別名が別称は「猪伏山(いぶせやま)ちきり城」呼ばれてることから。「ちきり」とは、機(はた)のたて糸をまく器具で、本丸と二の丸を重ねた形が「ちきり」に似ているところから由来するといわれています。

特許取得の二重構造織りで、中に伸縮性ポリエステル糸を入れることで両面起毛が可能なボリューム感を出しつつ、肌に触れる部分はオールコットンを再現。元々は綿毛布用に開発された素材を、つくるパジャマを運営する岩本繊維オリジナルの特注でパジャマ用に作っていただくことができ、コットンフリースが誕生いたしました。

デザイン面での工夫

パジャマにすることの難しさ

ようやく理想のコットンフリースの生地ができあがったのですが、ここから問題が起こりました。コットンフリースはボリュームのある両面起毛にこだわったため、生地の分厚さにより襟付きのパジャマのデザインをつくることが困難だったのです。初めは襟なしのパジャマのみを作っていましたが、冬用のパジャマということもあり、お客様から「襟がないと首元が寒い」とのお声をいただくこともありました。そこで、どうにか襟なし以外のデザインでおつくりすることが出来ないかと考えできたのが、ショールカラーデザインのパジャマです!

折っても立てても着られるヘチマ襟で寒い冬でも首元を温かく。コットンフリースの生地の分厚さにも対応可能な襟のデザインにすることでこの問題を解決することができました。

ショールカラーパジャマはこちらから↓

ついにフリースパジャマの完成!

フリースに負けない、暖かさと心地よさを実現

暖かいのに朝まで蒸れずに快適!さらには肌にあたる部分を天然繊維の綿100%にすることでフリースには負けない心地よさを実現することが出来ました。

コットンフリースの魅力

こうして約4年の月日をかけてできたコットンフリースにはたくさんの魅力があります。そんな魅力をふわふわなコットンフリースの秘密と合わせて7つご紹介します。

1.特許手法によるフリースのような風合い

先ほども少しお話をしましたが、コットンフリースは伸縮性のあるポリエステル糸をタテ糸として中に挟み、大きく畝ったタテ糸が表と裏のヨコ糸の間を捲縮することで、まるで中わたを入れたようなボリューム感に。伸縮性のあるポリエステル糸をタテ糸として中に挟み、大きく畝ったタテ糸が表と裏のヨコ糸の間を捲縮することで、まるで中わたを入れたようなボリューム感を実現することが出来ました。

2.抜群の保温力

 

保温率約50%という抜群の暖かさ。保温率の目安として、あったかインナーで約16%、裏起毛で34%、キルトニットで42%、フリースで54%、フリースとほぼ同じ暖かさに!ポリエステル糸は中に挟まっているため、生地の表、裏の両面とも全て綿100%で肌にあたる部分が気持ちいいのもうれしいポイントですよね。(全体の組成比率は綿95%、ポリエステル5%)

3.ふわふわな両面起毛

なんと8mmという超肉厚なコットンフリース。両面起毛をすることでこの厚さを実現しています。起毛生地であるため、保温力が高まると同時に生地に触れたときの暖かさが増すのです!

冬の寒い時期、パジャマを着たときにひやっとした経験はありませんか?触るとひんやりする生地の数値を表す接触冷感は、q-maxが0.2W/c㎡未満で暖かさを感じる目安と言われ、冬用のマイクロファイバーで0.1程度W/c㎡。コットンフリースはなんと0.058W/c㎡!袖を通してすぐに暖かさを感じていただけますので、冬の寒さにも安心です。さらにシャーリングという起毛してふわっとした部分をカットして平らに整える加工を一手間をかけることで高級ベロア生地のような美しい光沢を出しています。

4.蒸れにくさ

冬場にとっても暖かいフリースですが、原料であるポリエステルは吸湿性、吸放湿性が非常に低く、夜間に蒸れやすいという欠点があります。 人は冬場でも寝ている間にコップ一杯分の汗をかきます。保温力に優れ、体が温まれば温まるほど、体から出る水蒸気としての汗をパジャマが吸収し、放出しなければ、不快な蒸れ感と同時に、結露となった湿気が体を冷やしてしまいます。私自身も数年前は冬場の寒さに耐えかね、ポリエステルのフリースをパジャマとして使用していたことがありますが、蒸れの不快感から夜中に目が覚めてしまうがよくありました。

ですが、こちらのコットンフリースの吸放湿性は3.5%。目安としては2%以上で優れている、1%未満で吸放湿性が低いと言われているので、非常に蒸れ感が少なく暖かさと蒸れにくさを両方実現することができます!ちなみに、ポリエステルは0.5%程度なので、パジャマには不向きな素材と言えます。

5.静電気が起こりにくい

フリースの原料であるポリエステルは綿や人の肌との帯電配列から遠いため、摩擦によって静電気が発生しやすいという欠点があります。静電気はバチっという痛みはもちろん、静電気を蓄積させることで筋肉が硬直し肩こりや免疫力の低下など健康が損なわれてしまうかも…

コットンフリースは表、裏の両面とも全て綿100%(全体の組成比率は綿95%、ポリエステル5%。ポリエステル糸は中に挟まっています)なので、 綿と同様、静電気が起こりにくいのが特徴です。冬場は特に乾燥により静電気が起こりやすい季節なので、天然繊維であるコットンフリースで少しでも静電気を軽減したいものですね。

静電気について詳しくはこちらで↓

6.毛玉ができにくい

フリースの原料であるポリエステルは繊維としての強度が高いため、摩擦によってピリングという毛玉ができやすいという欠点があります。綿素材でも摩擦によって生地表面の繊維が絡まり、毛玉はできますが、洗濯などによって基本的にはすぐに取れてしまいます。こちらのコットンフリースは綿と同様、毛玉が起こりにくいのが特徴です。毎日のように着用するものだからこそ毛玉が起こりにくいパジャマ選びを!

7.地球環境にやさしい

当初から地球環境にやさしい天然繊維でのフリースを開発することにこだわっていました。近年、ESG(環境・社会・企業統治)、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からポリエステルなどの化学繊維を使用しない、もしくは再利用する動きが世界中で活発になっています。一人一人が出来ることは限られてしまうかもしれませんが、当店でも地球にやさしく、人にもやさしい素材を出来るだけ使用するよう心掛けています。また、今後の生地開発も天然繊維にこだわりを持って取り組んでいきます!

 

今後の課題

フリースを超える挑戦は続いていく…

フリースような生地の開発でこだわったボリューム感を再現することでふわふわで柔らかく非常に着心地が良くなりましたが、やはりその点生地に厚みが出ることでパジャマのデザインも限られてしまいます。


そのため今後は、さらに薄くしつつも暖かさは落とさず、軽さや伸縮性などにもこだわり開発に取り組んでいきます!

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