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レム睡眠とノンレム睡眠の役割

レム睡眠とノンレム睡眠という言葉を聞いたことがあるけど、どんな睡眠なの?どんな役割を果たしているの?今回はレム睡眠とノンレム睡眠についてご説明いたします。

そもそもレム睡眠とノンレム睡眠とは?

名前の由来と歴史

レム睡眠とはREM(Rapid Eye Movementの略)睡眠で、急速眼球運動が出現する睡眠のことを言います。
そしてそのまんまですが、ノンレム睡眠とはレム睡眠でない状態の睡眠のことをいい、人は一晩のうちにノンレム睡眠とレム睡眠を交互に4~5回繰り返しています。
レム睡眠は1953年にアメリカのユージン・アセリンスキーという科学者によって発見されたのですが、入眠後1時間~数時間後に急速眼球運動が発生し、その直後に被験者を起こすとかなり高い確率で夢を見ていたということが分かりました。
当時、急速眼球運動と夢が関連していることが注目を浴び、レム睡眠と名付けられて以来、レム睡眠は夢見睡眠などとも呼ばれ、レム睡眠状態でないノンレム睡眠の2つに睡眠は大きく分けられて現在に至っています。

どちらがレム睡眠状態でしょう?

こちらに猫の絵が3つあります。
一番左の絵はもちろん「覚醒」ですが、一番右の体の力が抜けてぐたっとなっている絵が「レム睡眠」、真ん中の体を支えて眠っている絵が「ノンレム睡眠」です。
この絵からすると一見、レム睡眠の方が熟睡しているように見えませんか?
そしてノンレム睡眠の方が体をしっかり支えているので、浅い睡眠のように見えますよね?
実はこれは違うんです。それは次の図を見ていただくとよく分かります。

レム睡眠とノンレム睡眠で、大脳と体のどちらが寝ているかが異なります

この図はレム睡眠とノンレム睡眠を理解する上で非常に大事な図です。
さらに睡眠のもつ役割とは何ぞやということも分かりやすく示してくれています。
ノンレム睡眠中は大脳を鎮静化させています。意識・思考の脳である大脳が眠っていますが、
脊髄などの体を操作する、中脳・後脳・髄脳(延髄)などは起きています。
逆にレム睡眠中は体を操作する生活の脳が眠っていて、大脳は活性化しています。

睡眠とは脳による脳のための管理技術

睡眠を管理する脳が「眠らせる脳」(脳幹:中脳・橋・延髄)であり、管理の対象となる脳が「眠る脳」(大脳)です。
これをレム睡眠とノンレム睡眠がそれぞれの役割を果たしているわけです。
睡眠には体を修復する役割ももちろんありますが、人間ならではのこのような睡眠は人間の脳が大きく関係しています。

なぜ人間はこのような睡眠スタイルを築き上げたのか?

人間は成人であれば1日に約7時間ほど睡眠を取りますが、イルカやハエなどはほとんど寝ませんし、渡り鳥なんかは脳を半分眠らせて、片方の脳を覚醒させて飛行します。
生き物によっては人間と同じような睡眠を取ると生命の危機があるので、生き物によって睡眠のスタイルは異なってくるわけですね。
では、なぜ人間が他の動物と違って、このような睡眠をとっているのか。
その理由は大脳にあります。
人間は他の生物と違い、進化の末、高等な生物となりましたが、それは大脳の発達によるものといえるでしょう。
つまり、中枢神経系の最先端に最後に完成する大脳(終脳)は“高級な新製品”であるだけに性能はたいへん高いのですが、莫大なエネルギーを消費して活性酸素のような廃棄物を多量に出しますし、そのせいでもろくて壊れやすく、長時間の連続運転に耐えられません。
疲れやすい大脳をいつも安定した状態に維持するためには、定期的にうまく休息、鎮静化させ、そして休息した大脳をうまく覚醒(活性化)させるような管理技術、睡眠が必要なんです。
このことから睡眠は大脳のために創案され、進化してきた、言い換えると「大脳が睡眠を創らせた」ことになり、また睡眠のおかげで大脳はいっそう高い性能を獲得できることになります。
ですので、「睡眠が大脳を創りあげた」ことにもなります。
ここで睡眠の役割を整理しますと、「脳を創る・脳を育てる・脳を守る・脳を修復する・脳をよりよく活動させる」となります。

レム睡眠の役割は「脳を創る・育てる」

「脳を創る・育てる」は発達途上にある胎児の大脳に当てはまります。脳を活性化させ覚醒に導く睡眠、動睡眠と呼ばれるレム睡眠のことです。
実際、生まれてからも生後1カ月くらいの赤ちゃんの睡眠の半分はレム睡眠です。成長するにつれて少なくなり、成人で20%をきるようになっていきます。人間の意識ある人生は「夢見る眠り」から始まるというわけです。

ノンレム睡眠の役割は「脳を守る・修復する」

レム睡眠の役割が進行して大脳が覚醒できるようになると、すぐに静睡眠と呼ばれるノンレム睡眠が出現して「脳を守る・修復する」役割を担当します。
この役割は次第に比重を高め、覚醒量の増加とともにノンレム睡眠の量も増え、前述のとおり、その分だけレム睡眠は減っていきます。
ただ、成人になってからもレム睡眠は重要な役割を演じ続けていて、大脳が自動的に目覚められるのは、古くから脳内に宿るレム睡眠、つまり「目覚めるための眠り」が一定間隔で大脳を活性化するからです。夢が現れるのはその結果です。

ノンレム睡眠は深い睡眠で、レム睡眠は浅い睡眠?

ノンレムの睡眠段階3~4は深い眠り

こちらの図は人の一晩の睡眠周期と睡眠の深さをあらわす睡眠段階の経過です。
最初はノンレム睡眠から始まり、睡眠段階1というかなり浅い眠りから、睡眠段階2の少し浅い眠りになり、深い眠りの睡眠段階3になり、もっとも深い眠りである睡眠段階4へと変化していきます。ちなみに睡眠段階3、4の深い眠りを徐波睡眠といいます。
この睡眠段階1~4をノンレム睡眠と呼び、寝始めから90分ほど経過したあたりにレム睡眠が出現します。
その後はまたノンレム睡眠が出現し、またレム睡眠が出現するということを一晩で4回ほど繰り返します。
そしてご覧のとおり、ノンレム睡眠は第2周期目からは深い睡眠が減っていきます。またレム睡眠は第2周期目以降は増えていきます。つまり、どんどん脳と体の修復から起きるための睡眠に変わっていっているということです。

レム睡眠=浅い睡眠ではありません

また、レム睡眠中の脳波を測定すると、浅い眠りである睡眠段階1のときの脳波とほとんど同じであることから、レム睡眠=浅い眠りと勘違いされやすいですが、レム睡眠中は外部刺激に対する応答は著しく低下しているので、必ずしも浅い眠りとはいえません。脳波と睡眠の深さが一致しないことからレム睡眠は逆説睡眠と呼ばれることもあります。
また被験者の脳波だけではレム睡眠なのかノンレム睡眠の睡眠段階1なのか判別できないため、眼球運動とあごにあるオトガイ筋(レム睡眠中は骨格筋などが著しく弛緩することは前述の説明のとおりです)の筋電図の3つを同時測定することが必須となっています。

レム睡眠と夢について

なぜレム睡眠中に夢を見るのか?

レム睡眠中は脳幹のアセチルコリン細胞というところから発生する強い間歇的な刺激が大脳皮質に送られています。レム睡眠中に眼球が急速に水平に動くのは刺激の発生源に近い外転神経核が刺激されるためです。
レム睡眠発生部位である橋(pons)と、視覚中継部位である視床の外側膝状体(lateral geniculate body)と、視覚領のある後頭皮質(occipital cortex)に強い反応がみられたので、この刺激をPGO波と名付けられました。現在では、他の部位も刺激していることが知られていますが、視覚系が強く刺激されることは現在でも変わっていません。
夢に主として映像が現れる理由がこのPGO波の存在です。
夢のストーリーが荒唐無稽だったり、ちぐはぐだったりするのは、夢を見ているときは間歇的に現れるPGO波が記憶部位をランダムに刺激するためです。
目覚めているときはばらばらな情報が入ってきても、前頭前野がそれらを順序立てまとめられますが、寝ているときは出来ないためです。
また注意を払うのに必要なノルアドレナリン神経も働かないため、自分が夢を見ているという状態も認識できません。

夢はレム睡眠だけ?ノンレム睡眠中は夢を見ないのか?

レム睡眠中は、急速眼球運動が頻発する時期(phasic期)と、ほとんど出現しない時期(tonic期)があります。
phasic期で起こすと夢を見ていたという報告率が高まり、夢内容の明晰度も高くなります。
ちなみに急速眼球運動は夢を見ているときにその情景を追っているという説もありますが、これもきちんと解明はできていません。
私たちが睡眠中に見る生々しい夢体験はレム睡眠中に生じますが、ノンレム睡眠中でも夢を見ることはあります。

ノンレム睡眠中に見る夢とは?

眠りに入った瞬間を意識することはできませんが、うとうとしているときに多くの人々が歩いている、ガヤガヤしている、海に赤い太陽が沈むのを見た、本を読んでいても考えが混乱してまとまらない、などの夢を見ることがあります。これを入眠時心像といいます。
つまりレム睡眠時に見る夢とは異なるものです。
電車の中で寝てしまって見る夢も入眠時心像です。健常者であればレム睡眠は入眠から90分ほど経過しないと現れないので、電車でウトウトした程度ではレム睡眠にはなりません。
そもそもレム睡眠時は体を支える筋力が著しく低下するので、電車の中でレム睡眠になると倒れてこんでしまいますよね(笑)

レム睡眠時での運動

夢を見ている間も、脳の中では日常生活と同じように運動をしています。走ったり、話したり、食べたり、ケンカしたりです。そしてそれらの運動に対応する神経細胞も働いていますが、レム睡眠時は脳幹のアセチルコリン細胞が様々な経路を経て脊髄の運動神経が働かないよう抑制の命令を出しているため、実際に体が動き出すようなことはありません。
しかし、この抑制経路が脳幹の病気で障害を受けると、大脳皮質からの運動命令が実行されてしまい、静かに眠っていて、夢を見る状態になると、大声を出したり、突然起き上がって歩き回ったり、横で眠っている人に乱暴を働いてしまうことがあります。
これをレム睡眠行動障害と呼ばれています。

夢遊病とは?

Wikipedia睡眠時遊行症より

かつては夢遊病と呼ばれていた睡眠時遊行症はノンレム睡眠時の徐波睡眠(深い眠り)中にみられます。
ノンレム睡眠中に中途半端に覚醒し、脳は半分寝ているような状態で体だけが動き出すような状態です。
徐波睡眠中は脳血流が低下し、この状態で起きてしまうと寝ぼけていることが多く、すぐにその場の状況把握ができないのが普通です。しかし、この状態でもベッドから落ちることもありませんし、寝返りをうつこともできます。
睡眠時遊行症が起こる原因は様々ですが、ストレスや遺伝、認知症などで引き起こされることがあります。

怖い夢を見たり、金縛りはなぜ起こるのか?

お化けに追いかけられたり、溺れそうになったりと夜中に怖い夢を見るのは、不安から引き起こされる場合が多いです。これは生存のために二度と失敗を繰り返さないために、有害となるものや不利な状況から回避するために機能する偏桃体が興奮するからであると考えられます。
目覚めているときに偏桃体が興奮すると、不安が引き起こされて危険を回避することができ、前頭前野の一部が偏桃体を抑制的にコントロールしているので、不安を抑えることができるわけですが、レム睡眠時には前頭前野の責任部位は活動を低下させているため、偏桃体をコントロールすることができません。
さらにこの状態では平静心を生み出すセロトニン細胞の活動が消失しているだけでなく、偏桃体は覚醒時よりも活動が上がっているため、不安は記憶から不安に関連した情報を引き出し、ますます不安な内容の夢を見ることになってしまいます。
また、寝入りばな(寝始めてから90分くらい)に金縛りにあうことがありますが、筋力が脱力し、体を動かせないレム睡眠下で、脳が半分覚醒したような状態を金縛り、または睡眠まひと言います。
体が動かないレム睡眠期に半分寝ていて半分起きている状況なわけですから、布団の上に誰かが乗っていて苦しい思いをしても声をあげて助けを呼ぶことができない、霊体験をしたかのように思うんですね。
大食をした後や不規則な生活をしている人、不安の強い人によく起こります。青年期によくみられますが、年をとると金縛りの回数は減少していきます。

ノンレム睡眠中に行われること

代謝を良くし、筋肉や骨を強くする

寝始め90分の深いノンレム睡眠中は「ゴールデンタイム」といわれるくらい大切な時間です。
体の成長や修復、疲労回復に重要な役割を果たしている成長ホルモンは、第1睡眠周期の深い睡眠であるノンレム睡眠中、つまり寝始めの90分に分泌量が最大となります。
成長ホルモンのおかげで筋肉や骨は強くなり、代謝が正常化されます。

免疫力を高める

ホルモンは免疫とも連動しているため、風邪やインフルエンザ、がんなどの免疫力をつけるためにも非常に大切です。
また、成長ホルモンと構造が近い、生殖や母性行動に関与するプロラクチンも最初のノンレム睡眠で多く分泌されます。

お肌のメンテナンス

皮膚の保水量は睡眠で上がりますが、これは肌の水分が、睡眠と密接につながっている性ホルモンや成長ホルモンの影響を受けるからです。

能力の向上をもたらします

記憶力や運動技能なども睡眠中に向上することが様々な実験から報告されています。

・睡眠初期の深いノンレム睡眠
→嫌な記憶を消去
→単語や場所の記憶が向上
→認知技能(※)の記憶が向上

※一定のルールに基づいて一連の手続きを実行する能力

・朝方の浅いノンレム睡眠
→運動技能の記憶が向上

ノンレム睡眠、レム睡眠を数セット繰り返し、時間がたつとともに浅い睡眠に移行する中で、記憶が整理され定着していきます。
記憶というと、インプットばかりに意識がいきますが、嫌なことや不要なことを忘れるのも大切な作業です。
入眠直後の最も深いノンレム睡眠のときに海馬から大脳皮質に情報が移動し、記憶が保存されるという報告もあります。

豆知識

短時間睡眠者はレム睡眠時間が短く、長時間睡眠者は深いノンレム睡眠時間が短くなりやすい

睡眠時間が短い人と長い人とでは、睡眠前半に発生する深い睡眠(専門用語で徐波睡眠といいます)の量は実はあまり変わりません。
浅い睡眠やレム睡眠の量が長時間睡眠者の方が増える傾向があります。
ちなみに一般的には、6時間以下の睡眠時間の人を短時間睡眠者(ショートスリーパー)、9時間以上の睡眠の人を長時間睡眠者(ロングスリーパー)と分類されています。

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