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睡眠のメリット|脳と体に必要な5つの役割

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この記事の監修者岩本悠資
所属:岩本繊維株式会社 代表取締役
出身:1983年10月 京都生まれ
経歴 同志社大学経済学部卒業。
広告代理店入社、営業部配属。
岩本繊維入社後、日本全国の寝具専門店、家具店などの小売店への卸営業活動を経て、自社ECサイト「Living Mahoroba楽天店」「つくるパジャマ」オープン。睡眠健康指導士のアプローチで快眠に関する知識や寝装品、 パジャマ選びなどの情報をブログで発信。
資格
趣味 寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒

睡眠は大切なんだろうけど、「そもそも睡眠にはどんなメリット、役割があるの?」そんな素朴な疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
今回は、睡眠がそもそもなぜうまれたのか、メリットがあるどころか必要不可欠なものであるということをまとめてみました。

目次

まずは睡眠と脳の密接な関係を知りましょう

睡眠とは、脳による脳のための管理技術です

脳といっても、中枢神経系における、髄脳(延髄)、後脳(橋・小脳)、中脳、間脳(視床・視床下部・松果体)などがあり、そして最後に完成する終脳(大脳)があります。
実は、この大脳のためにそもそも睡眠が生まれたといっても過言ではありません。
というのも、大脳は高級な新製品のようなもので、性能はたいへん高いですが、莫大なエネルギーを消費して活性酸素のような老廃物を多量に出し、そのせいでもろくて壊れやすく、長時間の連続運転に耐えられません。


大脳はその重量にして大体1300g、つまり全体の2%にしかすぎないのに、安静時でもエネルギー消費量の約18%も消耗していることからもいかに疲れやすいかが分かりますね。
それだけに厳重に管理しなければならないのですが、疲れやすい大脳をいつも安定した状態に維持するためには、定期的にうまく休息(鎮静化)させ、そして休息した大脳をうまく覚醒(活性化)させるような管理技術、つまり睡眠が必要なのです。
睡眠は大脳のために創案され、進化してきた、言い換えると「大脳が睡眠を創らせた」ことになります。

睡眠のメリット1. 脳を創り、育てる

レム睡眠で大脳を活性化させて、創りあげていきます

レム睡眠という言葉を聞かれたことがあるかもしれませんが、Rapid Eye Movement(REM)の略で、急速眼球運動が出現する睡眠です。
このレム睡眠中に夢を見ているということが分かり、知られるようになった言葉ですが、このレム睡眠中に大脳を活性化し、「脳を創る・育てる」役割があると言われています。
実際、生後1カ月の新生児は総睡眠時間16時間のうち50%はレム睡眠です。加齢とともにレム睡眠は減少し、成人だと総睡眠時間7~8時間のうち20%程度になります。
このことからも小さい子は睡眠中に一生懸命、脳を創って育てているということが分かりますね。
もう睡眠のメリットどころではなく、人間の成長において必要不可欠ですよね。。
ただ、レム睡眠についてはまだまだ分かっていないことの方が多いと言われています。

睡眠のメリット2. 脳を守り、修復し、よりよく活動させる

深いノンレム睡眠で大脳を鎮静化させて、修復します

さきほどのレム睡眠に対して、急速眼球運動を伴わない睡眠のことをノンレム睡眠といいます。ノンレム睡眠は脳波測定を用いて、その眠りの深さを段階1~4までの4段階に分けられ、段階4が最も深いレベルとなります。
レム睡眠中は睡眠段階1と非常によく似た脳波になり、ノンレム睡眠のような睡眠段階2~4のような深いレベルの脳波は現れません。
ノンレム睡眠の睡眠段階1と2が浅い睡眠、3と4が深い睡眠となります。
このノンレム睡眠の3と4で脳の機能低下から守り、修復をしています。
実際、覚醒量が多いとノンレム睡眠量が増えることからもそのことが分かりますね。
この睡眠のもつ機能もメリットというより、睡眠をとらないと生きていけないレベルの話ですよね。。
ちなみにレム睡眠中の脳波は、睡眠段階1の脳波と非常によく似ているゆえに、眠りが浅いと思われがちですが、実はレム睡眠中は外部刺激に対する応答は著しく低下しているので、決して浅い睡眠とは言えないことも覚えておきましょう。

睡眠のメリット3. 認知症予防にも効果的

睡眠中に脳の老廃物を活発にとりのぞきます

わたしたちの脳は直接、頭蓋骨に収まっているわけではなく、脳脊髄液に浸かっています。
転んで頭を打っても、脳が骨に直接ぶつかって傷つかずにすむのはこの保護液のおかげです。
小さな「脳のプール」ともいえる脳脊髄液はおよそ1500ccで、1日4回600ccほど入れ替わっているのですが、新しい脳脊髄液が出て、古いものが排出されるときに脳の老廃物も一緒に除去されることが最近の研究で分かってきました。
睡眠中は日中に比べ、ゴミ出し機能であるグリア細胞が収縮し、細胞間腔が60%拡大することで、より活発に老廃物を除去しているというわけです。
老廃物がたまりすぎると、アルツハイマー病やパーキンソン病など老化に伴う神経変性疾患を促進させる危険性が高まるため、睡眠をきちんととることで認知症などの予防にもつながるという大きなメリットがあります。

睡眠のメリット4. 体を回復、成長させて健全な状態に

寝始めの90分が成長ホルモンの分泌量が最大に

成長ホルモンとは脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、タンパク質合成を促進し、体の成長や修復、疲労回復に重要な役割を果たしています。
成長ホルモンは、起きている間でも一日の中で1~3時間ごとにスパイク状に分泌されますが、第1睡眠周期の深い睡眠である徐波睡眠中、つまり寝始めの90分に分泌量が最大となります。
大人の場合、このホルモンのおかげで筋肉や骨は強くなり、代謝が正常化されます。

免疫力をあげて病気を遠ざける

免疫はホルモンと連動しており、睡眠とも深い関係があります。
質の良い睡眠をとっていないと、ホルモンバランスが崩れ、免疫の働きもおかしくなってしまいます。
風邪やインフルエンザ、がんなどの免疫に関係する病気になる可能性が高まります。
実際、インフルエンザの予防接種でワクチンを取り入れても、睡眠が乱れていると免疫が確立せず、ワクチン接種の効果が認められないという報告もあるほどです。
睡眠には休息という役割も大きいので、「風邪は寝たら治る」というのは免疫力向上と休息の面で理にかなっているというわけです。
他にもリウマチなどの自己免疫疾患やアレルギーにも強く影響しています。

食欲ホルモンを調整し、健常な状態に

睡眠を制限することで、脂肪細胞から分泌される食欲を抑制するレプチンというホルモンが減少し、胃から分泌される食欲を促進させるグレリンが増大します。
食物を食べて栄養を摂取することで人は成長し、疲労回復もするため、食べ過ぎてもいけませんし、食べなさ過ぎてもいけません。睡眠はこういった食欲に関するホルモンバランスも調整しているんですね。
肥満問題に悩まされている現代人にとってはこれは大きな睡眠のメリットと言えますね。

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睡眠時間と肥満は関係ある?

自律神経活動を調整し、疲労回復し、健全な体に

人間の体では、意思とは関係なく自律神経が常に働いており、体温を維持し、心臓を動かし、呼吸し、消化し、ホルモンや代謝を調整しています。
自律神経には活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」があり、この2つは24時間働いているが、代わる代わる、どちらかが30%ほど優位になります。
日中は交感神経が優位で、体内では血糖値と血圧、脈拍が上がり、筋肉と心臓の動きが活発で、脳は緊張感と集中力が増します。活動のために必要な体内メカニズムですね。
反対に、睡眠中(レム睡眠ではなく、ノンレム睡眠なのですが)は副交感神経が優位となり、心臓血管系の活動は落ち着き、体温や代謝も低下します。
夜間睡眠全体でみると、布団に入ってから最低体温時までの体温下降期では、血圧や呼吸数、脈拍数は低下していきます。
その逆に、最低体温時から起床に向けての体温上昇期では、心拍数や血圧は上昇していき、また日中の活動のために体を切り替えていくわけです。
睡眠にはリラックスモードによる疲労回復と活動のための目覚めの準備の役割があることが分かりますね。
忙しい現代人では、交感神経優位の状態が多くなってしまいがちで、自律神経のバランスが崩れてしまうと、体温や腸管のはたらきなど、根本的な体の機能もおかしくなってしまいます。
きちんと睡眠をとることで自律神経のバランスを整えて、健全な体にすることが大切です。

睡眠のメリット5. 記憶や運動技能を向上させる

単語や場所の記憶などは寝始めの深い睡眠で向上します

単語や場所の記憶はノンレム睡眠の段階3~4の深い睡眠時(徐波睡眠といいます)に再処理されて、向上現象が起こると考えられています。
この徐波睡眠は入眠してから約3時間以内に発生するので、寝始めの睡眠前半が妨害されないように気を付けましょう。
勉学に励む学生さんにとっては睡眠はとても大きなメリットですので、徹夜はやめてきちんと寝ましょう!

運動技能の記憶は朝方の浅い睡眠が大切

運動技能の記憶は朝方のノンレム睡眠の段階2の浅い睡眠時に再処理されて向上現象が起こると考えられています。
これは余談ですが、このことから日本睡眠教育機構の先生が「朝練はあまり推奨できない」と講義の中でおっしゃっていました。
理由は、現代の学生は塾なども通い、ただでさえ睡眠不足の子が多い中、朝練に向かうために通常よりも早起きし、さらに寝不足になる。また、早朝に起床することで、朝方のノンレム段階2の睡眠が減り、運動技能の記憶向上も減るため、朝練は本末転倒なのではないかということでした。

認知技能の記憶は寝始めの深い睡眠と朝方のレム睡眠が大切

頭の中で暗算するような認知技能の記憶は、前述の入眠後3時間以内に発生する徐波睡眠(ノンレム睡眠段階3~4の深い睡眠のこと)と、朝方のレム睡眠で再処理されて向上現象が起こると考えられています。
レム睡眠は寝ている間、約90分周期で4回ほど発生しますが、朝に近づくにつれて長くなっていきます。朝に夢をみることが多いのもこのことから分かりますが、まさにあの時間にも認知技能の記憶は向上しているのですね。

あとがき

ブログ「睡眠のメリット」を書くにあたって

先日、スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長、医学博士の西野精治さんの講演に参加させていただきました。
西野さんといえば、10万部のベストセラーとなった「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者であり、その本の中にも出てくる「睡眠負債」という概念は大きな反響を巻き起こし、流行語大賞にも選ばれるという、睡眠業界の中ではすごい人なわけですが、今回は「睡眠のメリット」という内容でブログを書くにあたって、西野先生の唱える睡眠のミッションがとても分かりやすかったので、「スタンフォード式 最高の睡眠」の文章を少し拝借しております。
そして、わたくし岩本が所属する日本睡眠教育機構の「睡眠検定ハンドブック」の内容を元に「睡眠のメリット」という記事を書かせていただきました。少しでも皆さまの睡眠のお役に立つことを祈っております。

つくるパジャマ店長 岩本悠資(日本睡眠教育機構認定 上級睡眠健康指導士 第553号)

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■スタンフォード大学医学部教授、スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長
西野精治氏著書「スタンフォード式 最高の睡眠」参考

    岩本悠資
    1983年10月・京都生まれ
    同志社大学・経済学部卒。上級睡眠健康指導士。
    寝装品メーカー「岩本繊維株式会社」に入社後、心地よい肌触りで快眠できるパジャマに最適な素材を日々研究中。
    2017年11月にオーダーパジャマ専門店「つくるパジャマ」を開店
    趣味
    寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒

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