フリースを超えた綿素材｜カシミヤタッチコット開発秘話

フリースに負けない“天然繊維の冬パジャマ”をつくりたい

冬になると毎年悩むのが「どんなパジャマが一番あたたかくて、肌にやさしいのか」ということ。
フリースは暖かいけれど、蒸れや静電気が気になる。
綿は好きだけれど、真冬には少し寒い…。

そんなお悩みを抱える方のために、つくるパジャマでは
「フリースに負けない、天然繊維の冬パジャマ」の開発に長年取り組んできました。

そして7年の試行錯誤の末、ようやく完成したのが
綿なのに、まるでカシミヤのようにフワフワで暖かい
「カシミヤタッチコット」です。

この記事では、この特別な生地がどのような失敗と挑戦を経て誕生したのか、つくるパジャマ店長のわたくし岩本が開発の舞台裏をすべて包み隠さずお話しします。

なぜフリースではなく、天然繊維にこだわったのか

真冬にもっとも人気のあるパジャマ素材といえば、やはりフリースです。
見た目も着心地もフワフワで、軽くて、何より暖かい。
人気が出るのも当然だと思います。

しかし、フリースは基本的にポリエステル（化学繊維）です。

睡眠健康指導士の立場として、私はどうしてもここに疑問を感じていました。

• 蒸れやすく、夜中の目覚めにつながりやすい
• 蒸れた汗が冷えて、かえって体を冷やしてしまう
• 静電気が起こりやすく、肌への刺激になる

これらの理由から、パジャマとしては決して理想的な素材とは言えません。

理想とした「天然繊維フリース」の条件

それでも、フリースの良さも十分に理解しています。

• 両面フワフワの心地よさ
• 真冬をしっかり越せる保温性

この2つの魅力を綿100％で実現できないか。
これが、カシミヤタッチコット開発の出発点でした。

最初に挑戦した「コットンフリース」の限界

最初に開発したのが、今は廃番となってしまった「コットンフリース」でした。

両面フワフワで保温性も高く、可能性は十分に感じられましたが、実際にパジャマとして使ってみると、次のような課題が見えてきました。

当時の主な問題点

• とにかく重い（メンズMサイズで872g）
• 洗濯を重ねるとフワフワ感が薄れ、かたくなる
• 肌に沿いにくい
• ストレッチ性がなく、寝返りがしづらい

さらに、生地屋さんの廃業により、素材そのものが廃番になってしまいました。

「ジャンベルカ編み機」との出会い

その後もずっと理想の素材を探し続ける中で、運命的に出会ったのが
「ジャンベルカ編み機」でした。

ドイツ製で、日本にわずか2台しかない希少な編み機。
通常の編み機よりも、生地にたっぷりと膨らみを持たせられるのが最大の特徴です。

両面起毛×ジャンベルカという発想

両面起毛は、どうしても生地を傷めやすく、
型崩れ・縮み・耐久性の問題が出やすい加工です。

そこで生地屋さんとの打ち合わせの中で、こんなアイデアが生まれました。

「ジャンベルカで両面パイルを編んで、それを両面起毛してみたらどうだろう？」

さっそく

• 表糸
• 中糸
• 裏糸

すべて綿100％で試編みしてもらい、両面起毛を施しました。

ついに理想の“天然繊維フリース”が誕生…と思った瞬間

仕上がってきた生地を触った瞬間、思わず声が出ました。

「この見た目、この風合いだ…！」

すぐにパジャマに仕立てて着てみると、

• 着た瞬間のぬくもり
• フワフワの心地よさ
• 真冬に対応できる保温性
• 肌沿いの良さ
• 軽さ

すべてが理想通り。
「ついに完成した…！」そう思ったのも束の間でした。

洗濯で起きた“致命的な問題”

洗濯してみると、まさかの結果が待っていました。

• ひどい型崩れ
• 極度の縮み
• フワフワ感が失われ、風合いがかたくなる

原因は、起毛によって生地が縦方向に強く引っ張られてしまうこと。
特に今回は、フリースのようなボリューム感を出すため、かなり強く起毛していたことも影響していました。

中糸だけポリエステルに変えるという決断

そこで一度、根本から設計を見直しました。

オール綿100％にこだわっていましたが、
肌に直接触れない「中糸」だけをポリエステルにすることで、

• 縮み
• 型崩れ
• 耐久性

を改善できるのではないかと考え、再挑戦しました。

結果は予想以上に良好で、

• 洗濯後の型崩れなし
• 収縮率も十分許容範囲

に収まりました。

最後の壁「洗っても続くフワフワ感」

しかしまだ問題がひとつ残っていました。

洗濯すると、フワフワ感がすぐにかたくなってしまう。

そこで今度は、染め屋さんに相談し、
数回洗濯しても風合いが変わらない加工を施すことに。

この加工は、染め屋さんの企業秘密（門外不出のレシピ）のため、詳しくはお伝えできませんが、
おかげで洗ってもフワフワ感が続く生地に仕上がりました。

「カシミヤみたいだ…」と感じた瞬間

最終仕上げが終わった生地を、あらためて手に取ったとき、
自然と出た言葉が、

「カシミヤみたいだ…」

企画から完成まで、約2年。
何度も試作と洗濯を繰り返し、ようやく辿り着いた風合いでした。

こうして「カシミヤタッチコット」は誕生しました。

量産で起きた“まさかの色問題”

最終的に

• ワイン
• ネイビー
• ブラウン
• グレー

の4色で量産を進めました。

ところが、生地が上がってきて確認すると…

「グレー以外、風合いが違う…？」

グレーは理想通り。
でも濃色3色は、柔らかいものの「カシミヤタッチ」と呼べるほどではありませんでした。

すぐに生地屋さんに連絡し、
私自身も群馬県の染め屋さんまで足を運び、再調整をお願いしました。

何度も打ち合わせを重ね、ようやく全色で同じ風合いに近づけることに成功しました。

今、胸を張っておすすめできる“冬の集大成”

最後の最後まで、本当にいろいろなことがありましたが、
この生地は、私にとって「冬素材の集大成」だと感じています。

決して安いパジャマではありません。
けれど、

• フリースに負けない暖かさ（保温率44％でほぼフリース並）
• 天然繊維ならではの蒸れにくさ
• 肌へのやさしさ
• 洗っても続くフワフワ感

すべてを兼ね備えた、
「どの冬パジャマよりも良い」と自信をもって言える一着になりました。

ぜひ一度、この冬の“究極のパジャマ”をご体感ください。

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