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シルクパジャマの種類と特徴

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この記事の監修者岩本悠資
所属:岩本繊維株式会社 代表取締役
出身:1983年10月 京都生まれ
経歴 同志社大学経済学部卒業。
広告代理店入社、営業部配属。
岩本繊維入社後、日本全国の寝具専門店、家具店などの小売店への卸営業活動を経て、自社ECサイト「Living Mahoroba楽天店」「つくるパジャマ」オープン。睡眠健康指導士のアプローチで快眠に関する知識や寝装品、 パジャマ選びなどの情報をブログで発信。
資格
趣味 寝ること、育児、音楽鑑賞、お酒

ひとことにシルクといっても実は、パジャマやシャツなどに使われることの多いシルクサテン、シルクニット、シルクガーゼ、スカーフなどに使われるシフォン、着物などに使われる紬糸のものなど様々な種類の生地があります。今回はパジャマに使われることの多い生地にしぼって、シルクの特徴についてご紹介したいと思います。

1.そもそもシルクって何?

蚕の繭から作られる天然繊維です

カイコガの幼虫、蚕(カイコ)が吐き出す1本の糸で作られた繭(まゆ)を原料とした繊維の総称です。
綿や麻などの植物性の天然繊維と違い、蚕(かいこ)が蛹(さなぎ)のために桑の葉などを食べ、体内に蓄積されたタンパク質(シルクプロテイン)でできた動物性の天然繊維です。

シルクの歴史

シルクは絹とも呼ばれ、繊維としての起源は5000~6000年前の中国とされているので、わたしたちに身近な天然素材としては、麻に次いで歴史の長い素材です。
野生の蚕(かいこ)の繭(まゆ)を集め、糸をつむぎだして絹織物を作ったのがはじまりと考えられており、養蚕が盛んになってから蚕は野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物として知られ、餌がなくなっても逃げ出さず、人間による管理なしでは生育することができないため、綿や麻などに比べ、原料としては非常に希少なものになっています。

2. シルクパジャマの糸について

生糸(きいと)

シルクサテンのパジャマに使われることが多いのが生糸(きいと)です。
繭(まゆ)を熱湯、弱アルカリ液で処理して糸を引き出し、それを数本をより合わせて1本の糸にしたもので、天然繊維の中で唯一のフィラメント繊維(長繊維)なので、美しい光沢が特徴です。
また、生糸は、シルクの主体である「フィブロイン」と「セリシン」からなり、フィブロインの大小さまざまな三角の断面によるプリズム効果が光沢をいっそう美しいものとし、サテン織りには非常に相性がいい糸です。

絹紡糸(けんぼうし)

シルクサテンやシルクニットなどはシルクパジャマの中ではよく見かける生地ですが、実はシルク100%のガーゼパジャマもあります。
シルクでガーゼ織などをする場合はこの絹紡糸(けんぼうし)が使われる場合が多いです。生糸には適さない繭や生糸にする工程(繰糸工程)で出てきた屑糸などをアルカリ液で処理して綿状にしてから、適当な長さに切断して短繊維とし、紡績した糸が「絹紡糸」で「スパンシルク」とも言います。
ガーゼと言えば綿のイメージですが、綿糸や麻糸もこの短繊維です。短繊維のため、光沢は生糸などのフィラメント繊維と比べると劣ります。

3. シルクサテンとシルクニット

シルクサテンは光沢が美しくつるつる気持ちいい

サテン織りしたシルクサテンパジャマが、一般的に「これぞシルク!」といった、美しい光沢とつるつるすべすべな肌触りです。
ニット編みをしたシルクニットパジャマは綿のパジャマなどと比べると光沢はありますが、シルクサテンのような光沢はありません。なので、いわゆる「シルクパジャマ」をお求めの方は必ず、シルクはシルクでもサテン織りなのかニット編みなのか確認しましょう。
またあまりお目にかかりませんが、ガーゼ織をしたシルクガーゼもありますが、こちらもシルクサテンほどの光沢はなく、肌触りもつるつるではなくふんわり柔らか、そして何といっても抜群の通気性が特徴です。

シルクニットは伸縮性があり、滑らかな肌触り

ニット編みをしたシルクニットパジャマの一番の特徴は伸縮性、ストレッチ性があるということです。
逆にシルクサテンのような織物には基本的に伸縮性がありません。憧れのシルクのパジャマを買ったものの、伸縮性がなく、寝返りなどがうちにくかったり、膝や肘などが曲げづらかった…という経験がある方もいらっしゃるはず。
伸縮性を重視されるのであれば、シルクニットがおすすめです。肌触りも滑らかで柔らかく沿いもよいためフィット感も抜群です。

4.シルクはからだにやさしい

美肌効果や、解毒効果が期待できます

シルクの原料である繭糸は、中央部のフィブロインと、表面に接着しているセリシンという2種類のタンパク質で構成されており、お肌の成分に近い、アラニン・グリシン・チロシンなど約20種のアミノ酸が数百~数千も結合したタンパク質繊維です。
フィブロインには、抗酸化作用・抗菌作用・紫外線カット機能などの効果が期待され、化粧品、健康食品、さらに医薬品に活用されています。
セリシンは、アミノ酸の成分が人の皮膚に近いため、保湿・美肌・美白・抗酸化性作用などへの効果が期待され、保湿クリームや美容液などに活用されています。繊維素材としてだけではなく、ひとの皮膚や健康にもよい多くの機能を持ち合わせています。

天然のエアコン素材、冷え性対策にも効果的

シルクは繊維自体が微細な多孔質構造をしており、繊維の間に空気をたくさん含むことができます。空気の部屋をたくさん持つことで外の暑さ・寒さに影響されにくく(熱伝導率が低い)、快適に保ちます。
また、天然素材の中でも、放湿性、吸湿性、保温性にも優れているため、「冬は暖かく、夏は涼しい」快適な、まさに天然のエアコン素材。
さらに、シルクは綿の1.5倍の吸水性があるため、汗を吸収し放湿することで汗冷えを防ぎ、冷え性対策にも効果的です。

5.デリケートで取扱いが難しい

縫い目滑脱しやすい

縫い目滑脱とは、パジャマの縫い目に強い力が加えられると、糸がその方向に引っ張られ、縫い目が開く現象で、シルクなどの繊維表面がつるつると滑りやすい糸や薄地の素材のものは起こりやすいため、折り伏せ縫いやステッチなどでおさえて補強された縫製仕様になっているものがおすすめです。
さらに折り伏せ縫いが縫い代がペラペラならず、体に当たらないので肌にも優しく、縫い代がほつれてこない、洗濯にも強いなどのメリットもあります。つくるパジャマのシルクサテンパジャマはこの折り伏せ縫いです。
製造上手間が増え、コストは上がりますが、できるだけ永く心地よく使っていただくために必要な仕様です。

変色しやすい

シルクを構成しているフィブロイン中に含まれているアミノ酸が空気中の酸素や、日光などの紫外線をうけると、酸化・分解し、メラニンに変わるため、黄変してしまいます。
人間の皮膚も日焼けをすると肌が黒く変色しますが、それと同じで繊維の内側に出来るだけ有害な物質を取り入れないようにする自然の防御機能です。シルクパジャマは直射日光が当たらず、風通しのよい場所に保管するようにしましょう。

傷ができやすい

シルクは他の繊維に比べ、摩擦に弱い(摩耗強度が低い)ため、パジャマを着ているうちに擦れて毛羽立ち、傷ができ、最悪の場合、破けてしまいます。
摩耗強度は生地に使っている糸や、織り方、編み方なども強く影響しているため、全てのシルクパジャマが他の素材に比べて傷ができやすいわけではありません。たとえば、シルクサテンの生地に比べ、シルクガーゼなどはだいぶ摩擦による傷はマシです。
ただ、他の素材のパジャマよりも出来るだけ手荒に扱わないよう気を付けて着用しましょう。

6.まとめ

デメリットをきちんと理解して自分に合ったシルク生地を選びましょう

シルクといえば、やはりつるつるすべすべのシルクサテンのイメージが強いですが、織物か、編物かで特徴は大きく異なります。伸縮性があるパジャマが好みの方はシルクニットなのかなど購入前に縫製仕様なども含め、必ず確認しましょう。そして他の素材と比べ、やはりデリケートなので洗濯やお手入れ面で出来るだけ気を付けることが大切です。


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